気付き
先日、内田けんじ監督(以下、内田さん)の『運命じゃない人』を見た。
DVDには、特典映像として内田さんのインタビューというかトークが収録されており、その中でこの映画を作るきっかけとなったエピソードについて話していた。
内田さんは、高校卒業後アメリカに留学して、映画を学んでいる。
アメリカの大学で映画を学び、日本へ帰ってきてビックリしたのが<携帯電話>だったらしい。というのも、内田さんが高校を卒業して日本を離れる以前、携帯電話の普及率は大したものではなかった。それが、アメリカから帰国したときには、友人みんなが当然に携帯電話を持つようになっていたというのだ。
そして、一番衝撃を受けたのが携帯電話で通話している相手に向かって、「今どこ?」という言葉を発している人を見たときだったらしい。現代の感覚からすると、なんの違和感も感じない会話である。なぜ、内田さんは衝撃を受けたのか。
それは、日本へ帰国する以前、電話における会話で、「今どこ?」なんて会話はあり得なかったからである。電話というのは、自分の知っている<どこか>にいる人にかけるもので、<誰かの自宅>であったり、<会社>であったり、その場所にいる人にかけるものだったのだ。
それが携帯電話での会話だと、「今どこ?」という会話が生まれる。電話を携帯した通話相手が<どこ>にいるかは分からないからだ。
このことから、内田さんは「携帯電話であれば自分がどこにいるのかなんて、いくらでも嘘が吐けるな」と思ったという。そして、『運命じゃない人』のなかで、<携帯電話での会話>は作品を面白くするトリックとしてうまく使われている。これは是非見てもらいたい。
その当時、「今どこ?」という会話の違和感、面白さに気付いた人は、そんなに多くなかったはずだ。内田さんも、日本を離れずにいたら、その面白さには気付かず、『運命じゃない人』という作品は生まれなかったかもしれない。
僕も日頃の生活にたくさんあるはずの<気付き>を、面白がれる人でありたいものです。
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