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小さな映画館で『舟を編む』を見た話

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 お客さんの年齢層の高さ

今日は吉祥寺バウスシアターで映画『舟を編む』を見てきた。
まずは映画館の話をしたい。この吉祥寺バウスシアターは、すでに映画館の主流となったシネコンとは違い、3スクリーンしかないこじんまりとした映画館だ。昔ながらのという雰囲気。外観も少し寂れた感じがする。
僕は今回初めてこの吉祥寺バウスシアターに行った。嬉しいことに月曜日はメンズデーということで1000円で映画が見られる。そんなシンプルな理由。午前11時からの『舟を編む』を見に行ったのだが、席は半分くらい空いてたかな。月曜日の午前中だしまぁそんなものだろう。
映画館に入って、まず驚いたのは年齢層の高さだ。基本的に50代~70代くらいの方が多いように見えた。20~30代の若い人は僕を含めて指で数えられるくらいしかいなかったと思う。小さい頃からシネコンで映画を見てきた僕にとっては、未だかつてない年齢層の高さだった。(月曜日の午前中という要因が大きいにしても)そして、この年代の人たちが『舟を編む』のような作品を見に来るんだなということも驚きだった。椅子に座り、劇場の明かりが暗くなるまで「まぁ三浦しをんのベストセラーが原作だからかなぁ」そんなことを考えていた。

よく笑うご老人たち

映画が始まりスクリーンに意識を集中しようとすると、周りの音が気になり始めた。前方に座っているおじいちゃんの「カーッ!」とたんを切る音。後ろに座っているおばさんのクククという笑い声。後ろにいるおじいさんのハハハという笑い声。僕は「これは映画に集中できないかもしれない」と思った。
しかし、すぐにその不安はどこかへ行ってしまう。「おじいちゃんたちもこの演技を見て笑うんだな」「ここで笑うのかよww」という発見が面白くなってきたのだ。自分が笑うタイミングとおじいさんの笑い声が聞こえてくるタイミングが重なるとなぜか嬉しくなったくらいだ。
映画の作り手側が演出をした笑ってほしいポイント全部に反応してるんじゃないかと思うほどに、ご老人たちはよく笑っていた。おそらくシネコンで『舟を編む』を見たらこんなに笑いで沸く回数は多くないと思う。ご老人たちはこの映画を僕よりも楽しんでいた。自分のタイミングで好きなように笑えばいいんだという空気がそこにはあって、僕もご老人たちと一緒にその空気を楽しんだ。もしかすると、月曜日の午前中から『舟を編む』を見に来るようなご老人たちだからこそなのかもしれないが、感情表現の豊かさに感心してしまった。
そして映画後半の泣けるシーン。前半は笑いに沸いていた劇場の空気も、物語の流れとともに張り詰めていく。僕はスクリーンを見つめながらジーンと来ていた。ふとスクリーンから少し視線を下げると、おじいちゃんの姿が視界に入った。といっても、斜め後ろから見ているので表情はよく見えない。暗くてそのシルエットしか見えない。でも、そのおじいちゃんがハンカチで目頭を押さえているのは分かった。その姿を見て、涙が出た。僕はおじいちゃんと一緒に泣いていた。

小さな映画館で見て良かった

まだ見てない人のためにも映画の中身についてはほとんど触れていないが、人にもオススメできる良い映画です。ただ一つだけ書きたい。
映画の中で加藤剛さんと八千草薫さんが夫婦役を演じている。そして、おじいちゃんとおばあちゃんになっても素敵な夫婦の関係を築いていることを表現するシーンが何度か出てくるのだが、そのシーンがすごく良い。あのおじいちゃんは自分を映画の中の夫婦に重ねていたのかもしれない。まさか映画を見に行って、映画以外のところで泣かされるなんて思ってもいなかった。町の小さな映画館で見て良かった。
これから『舟を編む』を見るという方は、小さな映画館で見るのも悪くないかもしれません。

舟を編む

舟を編む



映画『舟を編む』予告編 - YouTube